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東京高等裁判所 昭和54年(行コ)16号 判決 1980年10月30日

東京都世田谷区経堂二丁目二七番一八号

控訴人

大塚喜啓

右訴訟代理人弁護士

安田叡

坂本福子

東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号

被控訴人北沢税務署長

和泉田三喜造

右指定代理人

根本真

佐々木正男

鴨下英主

吉岡光憲

加藤広治

右当事者間の課税処分等取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人訴訟代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四五年三月二日付で控訴人の昭和四一年分ないし同四三年分の所得税についてした各更正及び各過少申告加算税の賦課決定を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、主文第一、二項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決摘示事実と同一であるから、ここにこれを引用する。

(控訴人訴訟代理人の陳述)

一  被控訴人の調査の違法性について。

所得税法二三四条第一項は、税務署等の当該職員は、「所得税に関する調査について必要があるとき」にのみ質問検査をすることができると定めているのであるから、所得税の確定申告に関する調査についても、申告にかかる収入金額と従前の収入金額との比較、景気の動向等諸般の事情に照らし、納税者につき過少申告を疑うに足りる相当の理由があって、事実を明らかにする客観的必要がある場合でなければ、濫りに質問検査を行うことはできない。本件において、控訴人の収入金額は、昭和三九年分が二七九万一、六四〇円、昭和四〇年分が三一一万一、七八五円であるのに対し、昭和四一年分は四一三万七、二七五円、昭和四二年分は四二九万八、一四〇円、昭和四三年分は四八〇万一、二〇〇円であって、序々に金額が上昇しておりこそすれ、決して低減していないのみならず、昭和四一年ないし四三年当時は、自転車業界全般がきわめて不振な状況であったことをあわせ考えると、本件係争各年分の控訴人の確定申告につき過少申告を疑うべきなんらの理由もなかったのであるから、北沢税務署職員がした質問検査は、その必要性を欠くものであったというべきである。また、前記法条所定の質問検査にあたっては、調査対象者の営業活動あるいは私生活の平穏に対し無用な影響を与えないよう事前にその実施の日時、場所等を通知すべきであり、また質問、調査の手続として、調査対象者に対し、調査事項を特定し、調査の目的ないし理由及びその必要性を開示するのが当然であり、しかも、質問検査の内容は、具体的に必要な最小限度の範囲に限定しなければならない。しかるに、本件においては、北沢税務署職員が、なんらの事前通知もなしに、昭和四五年一月二七日突然控訴人方に臨店し、「なんのための調査か。」という控訴人の問いに対し、ただ、「昭和四一年分の調査にきた。とにかく帳面を出してくれ。」といい、「帳面のどの部分を出せばよいのか。」という控訴人の問いに対し、「全部出せ。」というのみであった。同年二月三日臨店の際にも、当該職員は、「昭和四三、四二、四一年分の帳面を全部出せ。」というのみであって、控訴人が理由の開示及び提示すべき書類の特定を求めても、なんらの応答もしなかったのである。このような実情のもとにおいては職員の質問検査は、明らかに違法なものというべきである。さらに、所得税についての納税申告、更正、賦課決定等は、課税期間毎に行われるのであるから、調査もまた、課税期間毎に行われるべきものであり、一の課税期間を越え、遡って質問検査を行うことは、法律上許されないと解すべきである。したがって、本件において、当該職員が、昭和四五年に至り、昭和四一年ないし四三年に遡って質問検査を行ったことは、違法たるを免れない。

二  推計課税の必要性及び合理性の欠如について。

1  およそ経理担当事務員などを雇う余裕のない控訴人のような零細規模の商店経営主が、その記帳能力の点において充分でないことは、避け難いところであるが、控訴人は、それなりの工夫を重ね、自己の収入、所得金額の把握に努力を傾けて記帳を行い、これに基づいて本件確定申告をしたのである。しかるに、たまたま得意先台帳掲記の自転車販売台数の四パーセント強にすぎないものについて、売上伝票が脱漏し、またはその脱漏を疑わしめるものがあるからといって、右売上伝票を基礎にこれを集計して作成した本件係争年分の売上、仕入等に関する明細表(「明細表」)が控訴人の売上金額を実額で認定する資料としての信憑性に欠けるものとすることは納得できない。また、明細表中売上に関する部分は、売上伝票の売上金額を集計したほか昭和四一年分については現金売上に毎月三万円ずつを加算し、同四二年分については現金売上、掛売にそれぞれ毎月二万五、〇〇〇円、計五万円ずつを加算計上してあるが、これは、一日一、〇〇〇円前後の小額の売上は、黒板等にメモすることとしていたものの、逐一刻明に伝票に記帳することはせず、月末に上記各金額を概算額として追加計上したものであり、このような処理によって、明細表の信憑性は、いささかも損われるものではないのである。

また、控訴人は、原審で主張した明細表を含む帳簿、書類のほか、仕入に関する請求書、領収証等所要の資料を備え付けていたから、もし職員が納税者の理解を得て調査を行うべきであるとする国税当局の運営方針に忠実に従って行動すれば、本件の調査も円滑に進行したはずであった。そして、控訴人が当該職員に対しこれらの資料を提示しなかったのは、正当な理由に基づくものであったこと従前主張したとおりである。

以上によれば、本件各更正につき、推計によって控訴人の所得金額を認定する必要性は、なかったものといわなければならない。

2  被控訴人が控訴人の所得金額推計のために用いた同業者の差益率は、同業者の中から、販売原価が控訴人の販売原価と比較して上限二倍、下限〇・五倍の範囲にある者を抽出して、算出したものであるが、右同業者の抽出にあたっては、自動二輪車及び軽自動四輪車の販売原価の割合が二〇パーセント以上のものを除いたものであり、換言すれば、右車両の販売原価の割合が二〇パーセント未満の同業者をすべて差益率算定の基礎に置いたものである。しかし、控訴人は、右車両を全然販売しておらず、小型のバイクを訴外東都ホンダモーター株式会社から若干数仕入れて、これを販売していたにすぎず、右バイクの仕入総額に対する割合も、昭和四一年二パーセント強、昭和四二年一五パーセント弱、昭和四三年は右以下にとどまるものであった。このように、控訴人の営業規模は、同業者のそれとの間において類似性を欠くから、控訴人に対し被控訴人主張の同業者差益率を適用して所得金額を推計することは、合理的でないというべきである。

(被控訴人指定代理人の陳述)

一  控訴人の前記一の主張は争う。被控訴人が控訴人提出の確定申告書を検討したところ、その申告にかかる所得率が事業規模の類似する同業者の所得率に比べて過少であり、また、控訴人にかかる取引資料の内容からみて、申告された収入金額が過少であると認められたところから、控訴人の申告金額の算出根拠を調査する必要があるとして、職員を控訴人のもとに派遣したものである。そして、当該職員は、控訴人に対し、調査理由について「昭和四三年の所得税の調査にきました。」と明瞭に述べているのである。控訴人のように申告にかかる所得金額の基礎が明らかでない納税者に対する調査を行うにあたって、売上とか仕入等特定の事項を限定して調査対象とすることは、とうてい不可能である。また、調査の実施日時などを事前に調査対象者に通告することは、質問検査の要件ではなく、通知をするかどうかは当該職員の合理的裁量に委ねられていることであって、それをしなかったからといって、直ちに質問検査が違法となるものではない。さらに、昭和四五年に至って昭和四一年ないし四三年の所得の調査を行うことについては、国税通則法七〇条一項の反面解釈として、確定申告期限から三年後の期間内においては適法に増額の更正をすることができるのであるから、更正をするについて調査の必要があれば、その期間は適法に質問検査をすることができると解すべきである。

二  控訴人の前記二の主張は、争う。

控訴人の主張する本件係争各年分の売上金額の原資料であるという売上伝票が日々の取引を正確に記載したものとは認められず、また、昭和四一年分についての毎月三万円ずつ、昭和四二年分の毎月五万円ずつの売上の追加計上の正当性を裏付けるに足る事情も認められない以上、控訴人が売上金額の実額を証するものと主張する明細表は、信憑性に欠けるものであること明らかである。しかも、控訴人は、税務署職員の三回に亘る調査のための臨店に対し、いたずらにことを構える態度に終始し、右明細表を含む帳簿、書類を提示したり質問に答えることを拒絶し、調査に協力しなかったのであるから、控訴人の所得金額を推計によって認定する必要性が存したものというべきである。

(証拠関係)

控訴人訴訟代理人は、甲第三〇、第三一号証の各一、二、第三二号証、第三三号証の一、二を提出し、当審における証人高橋重三、同寺沢孝、同大塚美智子の各証言及び控訴人本人尋問の結果を援用し、「乙第一三号証、第一五ないし第一七号証、第一九号証の成立は認めるが、乙第一四、第一八号証の成立は知らない。」と述べ、被控訴人指定代理人は、乙第一三ないし第一九号証を提出し、「甲第三〇、第三一、第三三号証の各一、二の成立は認めるが、甲第三二号証の成立は知らない。」と述べた。

理由

本件についてさらに審究した結果、当裁判所も控訴人の本訴請求は失当であると判断するものであり、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の説示理由と同一であるから、ここにこれを引用する。

一  原判決一三枚目裏九行目の「答えなかった」の次に、「以上の交渉は、同日午前一〇時ころから約二〇分間に亘って行われた」を、同一四枚目表九行目の「をしなかった」の次に、「。以上の交渉は、同日午前一一時ころかから約四〇分間に亘って行われた」を、同一五枚目表一〇行目の「中止した。」の次に、「以上の交渉は、同日午前一〇時ころから一一時ころまで行われた。」をそれぞれ加入し、同一五枚目裏五行目から六行目の「右認定に反する証人寺沢孝の証言及び原告本人(第一回)尋問の結果」を「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一七号証の一、二の記載は、原審における証人原進午の証言に照らすと、真実に合うものとは認め難く、原審及び当審における証人寺沢孝、当審における証人大塚美智子、原審及び当審における控訴人本人(原審は第一回)の各供述」と訂正し、同一六枚目表六行目の「明らかである」の次に、「(弁論の全趣旨によれば、控訴人は、いわゆる白色申告者であることが明らかであるから、適用資格の点において、推計課税をする妨げは存しない。)」を、同二二枚目表七行目及び同二四枚目表三行目の各「原告本人(第二回)」の次に、いずれも、「、当審における証人大塚美智子」を、同三二枚目表六行目から七行目の「疑わしめる。」の次に、行を改めて、「控訴人は、当審において、以上の台帳と伝票との関係の概括的説明として、台帳に現金売りと表示されているのに、伝票に掛売と表示されているのは、顧客が当初は現金で支払うといっていたが、現品を引き渡す段になってから、掛売に変更するような場合があったことによる旨供述するが、原審における控訴人本人尋問の結果(第二回)によれば、台帳は現品引渡の時点で記帳するというのであるから(控訴人は、当審に至り、台帳の記帳は、自転車が組み立てられて、いつでも引き渡せる状態になったときに行う旨供述を変えたが、そのまま信用することはできない。)、現品を引き渡す段になって掛売に変更した場合に、台帳にあえて現金売りの表示をするということは納得できないところである。」を、同三九枚目表八行目の「若干扱っていた。」の次に、「当審における証人大塚美智子は、控訴人方ではバイクを販売したことはないと供述するが、右供述は、原審における控訴人本人の供述((第一回))と牴触する。」をそれぞれ加入する。

二  国家財政の基本となる徴税の適正な運用を確保し、租税の公平確実な賦課徴収を図ることが、租税法の基本理念であることは、いうまでもない。ところで、申告納税方式を採る所得税にあっては、納付すべき税額は、納税者のする申告によって確定することを建前えとし、その申告がない場合又はその申告に係る課税標準や税額が法令の規定に従っていなかったり、税務署長の調査したところと異なる場合には、税務署長の決定若しをは更正によって確定することとなっている(所得税法一二〇条、国税通則法二四条、二五条参照)。

所得税法二三四条所定の税務署職員の質問検査権は、もっぱら、税務署長の右決定若しくは更正のために必要な資料を収集して租税の公平確実な賦課徴収を図ることを目的とする行政手続であって、その性質上刑事責任の追及を目的とするものではない(最高裁判所昭和四七年一一月二二日大法廷判決、刑集二六巻九号五五四頁)のであるから、税務署職員は、「当該調査の目的、調査すべき事項、申請・申告の体裁、内容、帳簿の記入・保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には・・・質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会理念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、・・・実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的具体的告知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない」ことは、最高裁判所決定(昭和四八年七月一〇日第三小法廷決定、刑集二七巻七号一、二〇五頁)の示すところである。いま、本件についてこれをみるのに、原審証人原進午の証言によれば、被控訴人が控訴人提出の本件係争各年分の確定申告書を検討したところ、申告にかかる所得率が事業規模の類似する同業者のそれと比較して過少であり、また、控訴人に関し収集された取引資料の内容からみて、申告にかかる収入金額の過少であることが疑われたため、職員を派遣して、控訴人に対し質問をし、帳簿書類の提示を求めたものであることが認められるから、質問検査を行う客観的必要性があったものといわなければならない。控訴人は、過少申告を疑うに足りる相当の理由がなかったと主張するが、仮りに控訴人が右主張の根拠として挙げる事実が存したとしても、そのことから直ちに過少申告を疑うのは相当でなかったということはできないから、控訴人の主張は採用できない。そして、先に引用に係る原審の認定した事実関係によれば、当該職員は、前後三回に亘って控訴人方店舗に臨み、控訴人に対し、昭和四三年分の所得税の調査のため臨店したもので、調査は必要に応じて昭和四二年分以前に遡る旨告げて、帳簿、書類の提示を求め、仕入先を質問したこと、調査の理由及び必要性については、控訴人の申告にかかる所得金額が正確かどうかを確認するためのものであると説明したのであるから、控訴人が右質問検査を受忍することによってその営業の自由や生活の静穏等の私的利益を損われる特段の事情があったものとは認め難い本件において、叙上のような態様の質問検査を目して社会通念上相当の限度を越えたものと断ずることはできない。また、本件において、調査実施の日時を事前に通知しなければ、控訴人に対し適切な答弁や帳簿、書類の充分な提示を期待することが困難となり、調査目的の達成も阻害されるというような事情も認められないから、事前の通知がされなかったことを非難することは失当である。なお控訴人は、昭和四五年に至り遡って昭和四一年ないし四三年の所得税の調査をするため質問調査権を行使したことは違法であると主張するが、所得税については、原則として、確定申告期限から三年を経過した日以後は増額の更正を行うことはできないとされているが(国税通則法七〇条一項、所得税法一二〇条一項参照)、その反面において、右三年の期間内においては増額の更正をすることができるのであるから、該更正のための質問検査を行うことは、法の当然に許容するところであるというべきである。

以上のとおりであって、本件における質問検査の違法をいう控訴人の主張は、採用するに由なく、控訴人は、右質問検査に協力する義務があったものとしなければならない。

三  税務署長が所得税について更正をする場合に、直接資料によらず、各種の間接資料を用いて所得を認定する方法として法律上認められるいわゆる推計課税(所得税法一五六条参照)は、直接資料を用いて所得の実額を把握することに代わる例外的な措置であるから、充分な直接資料が得られない場合にはじめて推計課税の方法によることが許されるのである。これを本件についてみるに、先に認定したとおり、被控訴人は、控訴人の本件係争各年分の所得の実額を把握するため必要な資料を取得すべく、職員を派遣して、数回に亘って控訴人に対し質問を行い、帳簿、書類の提示を求めたのであるが、控訴人は、当該職員に対し、右帳簿書類を提示せず、質問にも答えないなど調査にまったく協力しなかったのであり、このような場合に直接資料を取得できないからといって課税を放棄することは、租税の公平負担の見地から許されないところであるから、被控訴人が本件各更正において控訴人の所得を推計によって認定したことは、その必要性を具備したものとしなければならない。

控訴人は、控訴人備付の明細表が本件係争各年の控訴人の売上金額を認定する資料として信憑性を有しているから、これによって控訴人の所得の実額を認定することが可能であると主張するが、明細表の基礎とされた売上伝票は、控訴人が日々の取引を正確に記載したものではなく、したがって、これを集計して作成したとされる明細表は、控訴人の本件係争各年分の売上を正確に表示したものとすることができないこと、右明細表において昭和四一年分については現金売上に毎月三万円ずつを加算し、昭和四二年分については現金売上、掛売にそれぞれ毎月二万五、〇〇〇円、計五万円ずつを加算したことも、正当であることを裏付けるに足る証拠がないことは、先に説示したとおりであるから、右明細表は、売上金額を実額により認定する資料としては信憑性に欠けるものといわざるをえない。のみならず、本件各更正のための調査にあたり、職員が控訴人に対してした帳簿書類の提示の要求にはなんら違法の廉はなく、控訴人は、これに協力する義務があったのにかかわらず、故なく明細表を含む帳簿書類を提出しなかったのであるから、本件において推計課税の方法によったことは、やむをえないものというべきである。

ところで、推計課税の要件ないし必要性が存する場合においても、推計の方法は、できる限り実額に近い数値を算出できるような合理性を備えたものでなければならないことは当然である。そして、本件において被控訴人が用いた推計の方法は、合理的なものとして是認しうること、先に説示したとおりである。この点に関し、控訴人は、自動二輪車及び軽自動四輪車の販売原価の割合が二〇パーセント未満の同業者と右車両を取り扱わない控訴人との間には営業規模の類似性がないから、右同業者の差益率を用いて控訴人の所得を推計するのは、合理性がないと主帳するが、控訴人が自認するように、控訴人は、東都ホンダモーター株式会社から原動機付自転車(バイク)を仕入れて販売していたのであり、その仕入総額に対する割合は、昭和四一年は二パーセント強にとどまったが、昭和四二年は一五パーセント強に達し、昭和四三年はそれ以下(弁論の全趣旨によれば、九パーセント強であることが認められる。)であったというのであり、しかも、自動二輪車及び軽自動四輪車の修理による収入がないとしても、それに対応するものとして原動機付自転車を含む自転車の修理による収入が見込まれるのであるから、控訴人が自動二輪車及び軽自動四輪車の販売をしていなかったとしても、それによって控訴人の営業状態が前記同業者の平均より格段に悪くなるはずであるということはできないから、控訴人の主張は、採用できない。

よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につい民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡部吉隆 裁判官 蕪山厳 裁判官 安国種彦)

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